お前は命が惜しくないのか?

健康処 楓を狙った空き巣というのは、人の気配がない昼の待合室を狙ってやってきた。
そわそわ
しかしそこは花信風幸洋(くわしんぷうこうよう)の間合い、近くに(不健康が)いるせいで、落ち着くなっていたそうだ。
「お前は命が惜しくはないのか」
「今まで、こんなものかちょろいなってしか思った事なくて、あんなにも怖いって思わなくて」
カチカチと震えながら、そう話した。
体を作らずに、技もかけ慣れていない人間が、気配なく、いきなり捕まれて、そこからスープレックス
「後ろから持ち上げられてから、スローモーションになった」
「っていってます」
幸洋の一人息子の青葉が話した。
「走馬灯見えたな」
弟子の虎児が頷いた。
「オヤジのここまでイケるは、だいたい人の想像を越えた先にあるからな 」
えっ?これ、ちょっと大丈夫じゃない、ギャァァァァァァァ。
「失神はしないから怖いんだよ」
「高さで言うなら四階ぐらい」
人間が気を失う高さは五階ぐらいとされています。
「その言い方、でも俺はまだそこまで至らないんだよな、塩梅っていうの、掴めなくて」
それを真似しないように言われてます。
「自然とそれが出るまで‥か、よーし今日もがんばって揉んでやるぜ!」
「その手!」
「なんだよ、ゆすら」
「やる気を出されるのはわかるけども、変な方向に行かれても困るわよ」
岩彰(いわあき)ゆすらの言葉に。
「正論だね」
「でもや、若気のいたりと言う言葉もあってな」
「確信犯が」
「孤児くんが言う通り、若いときはなんでもしていいと思うよ」
「先生は大人になってから、この道をめざしたそうですけど、何かきっかけがあったんですか?」
先生は当時の彼女である花信風さんと付き合ってから、手に職をとは思ったそうだ(先生の旧姓は高木である)
「もし子供が生まれたら、このままでは保育園の面接で落ちるって思ったから」
わりと現実的な理由でこの道に来ました。
ここで青葉が苦い顔をした、思春期の始めに聞かされた、この時のエピソードを思い出したのだろう。
「きゃー久しぶり、結婚したんだって」
母親の知り合いがおめでとうをいってきた。
「で、旦那さんって何をしている人なんですか?」
「無職でーす」
空気は凍りついた。
「ああ、そうなんだ、じゃあ、私はいくから」
正確には次の職場が決まった状態で、新婚ということもあり、一ヶ月ほど余裕を持たせた時期でのことなのだが。
この話を聞いてから、青葉は変わった。
「僕、この先生に習いにいこうと思うんだ」
自分がしっかりしなければいけないと感じたらしく、そこから父親への呼び方もパパからオヤジになったそうだ。

市内だったらどこまで言っても2000円

体に不安を抱えたままの状態で、何かをするというのは、予想以上に絶望の中にいる。
「手術しないとダメですね」
腰から足のしびれが始まっていた私にそう告げられた。
ただこの時他の病気でかかっていた医師からは、「手術してもなるから、運動、保存療法にしたほうがいいよと言われたため、またなるという話から、不安と付き合いながら、生活をする日々が始まった。
振り替えれば何年間このような状態、毎日辛かったのだが。
「キエー」
同じく腰の悩みを抱えた知り合いが、良くなったと知り、知り合いからここだよと勧められた健康処 楓の花信風先生に投げられたら、その苦しみは終わったのであるを
「あれ?」
「どこか、違和感が?」
「え?え?」
私は夢を見ているのだろうか、力を入れても空回りするあの感じがない、体が思い通りに。
「あは!」
確認していくと、涙と鼻水がぶぁぁぁぁぁと出てきた。
「先生、今まですごい辛かったよ」
「こうしてまた一人、先生を神と称える者が増えたわけだ」
弟子の虎児(こじ)と。
言い方!
つっこみをしながら、泣いている人のためにタオルやティッシュを用意するのは、健康のためならば私は神にも弓を引く男、花信風幸洋(くわしんぷう こうよう)の一人息子青葉である。
「でもさ、この辺の運転を仕事にしている人とか、ほとんどが先生!先生!って慕っているぜ、先生が出張できるようになっているのもこのおかげだし」
日宿交通(ひやど こうつう)のおすすめプラン。
・駅から健康処 楓までの往復便は3000円。
・市内でしたらどこまでいっても2000円で先生をお届けするでゴワス。
「さと、午前のお客さんは今ので最後だね」
「オヤジ、かき氷作っていい?」
「いいね、お願いするよ」
「じゃあ、出来たら俺が持ってきます」
先日先生ヘルプ、手伝いに来た婿の腰がやられちまったよと、山でブドウ作り最盛期の農家から連絡がきた。
婿の腰だけでなく、溜まっているであろう疲れをむしりとるため、花信風一家で出張にいった。
「花信風(くわしんぷう)って読めないわよね、私が言えたもんじゃないけど」
その時葡萄を買ってきたが、そこは町中の価格ではなく、山での価格だったため、買えた量がとんでもないものであった。
「無駄にならなくてよかったな」
生で食べれるものは食べたのだが、そうではないものはジャム加工体験にいった岩彰(いわあき)がそれを材料に、かき氷に合うジャムにしてくれた。
「これだと急いで食べなくていいし」
「マダムホワイト(虎児のお母さん)が目えつけそう」
「うちの母ちゃん好きそう」
マダムホワイトは、前に虎児の母が所有していたコインランドリーの名前からである。
虎児の父親が入院した総合病院でコインランドリーが無くなったと知り、病院の駐車場のところにバン!と店を始め、その導入している機械を新しく買い換えなければならないかな?の時期を迎えた辺りに、大手からお店を売ってほしいと言われ、売却した。
「そしたら病院が一般人立ち入り禁止、面会もできなくなったからな」
この二人、虎児と青葉は元々小学校の同級生である。
青葉が現在すんでいるこの楓に引っ越すために、転校してからも、母親同士の交流は続いていたのだ。
「これできたから、持っていってくれる」
葡萄の果肉がたっぷりと氷に乗っている、氷もすぐそばの酒蔵が使っている水のもので、この時期は他の水が飲めなくなるぐらいすこぶる旨い。
「後、クリーニングの伝票を持ってきてくれる?」
「わかった」
ビスケットを軽くつまみ食いしながら、かき氷を持っていくと、書斎に幸洋の姿がない。
「先生?」
とけては困るので、書斎の冷凍庫にかき氷を入れると。
「うううううう」
うめき声が聞こえてきたので、それを頼りに待合室にいくと。
幸洋は誰かにスープレックスかけ中であった。
それを見て、虎児は頭の中で、五臓六腑に効く先生の技一覧を思い出すが。
「虎児くん」
「あっ、待ってください、今思い出します」
え~とあれでもないな、これも違う。
「先生、俺の不勉強でした、これはなんでしょうか?」
「ヒャクトウバン」
「ひゃくとうばん‥」
その名前に心辺りがなかった。
「この人は空き巣」
「なんだ、空き巣か」
そうホッとすると。
「何しているのさ、警察だよ、警察!」
あまりにも来ないので、様子を見に来た青葉が急いで通報しました。

大丈夫、君も慣れるよ。

 

 

季節の変わり目と気圧の低さ、この重なりは…
「申し訳ないけども、マッサージしてもらおうかしら」
岩彰(いわあき)でさえもそう言ってしまいそうな日である。
遠くからでも、健康処 楓の名前の由来になった銘木は青々としているのがよくわかる。
重いドアをよいしょとあけ、スリッパに履き替え、待合室に入ろうとした時。
ガタン
先生の前に立っていた最後の不健康が崩れ落ちた。
「……」
「あっ、こんにちは」
「こんにちは岩彰さん」
本日の待合室は、この人の他にも倒れてる人たちがいて。
「よぉ」
奥から同級生の虎児(こじ)と先生の一人息子青葉が、担架をもって現れた。
「そっち足が出てる」
「よっと、仮眠室に運んでいる最中なんで、ちょっと待っててな」
「今日はお忙しいんですか?」
「年に一回ぐらいはこんな日があるね」
聞けばこの後出張にいくので、ええい!面倒くさい、ここで全部片付けてやる!となったらしい。
「腰やっちゃったそうなんだよ」
「あぁ、それは」
先生助けてくださいなんだそうだ。
「よーし、準備できたぞ」
岩彰は自分の不調を同級生の虎児にマッサージをしてもらっている。
先生と奥さんに期待されているだけあってとても上手い。
コリコリコリ
足の右親指を指の腹でアプローチする。
「今日は早めに寝ることだな」
「うん、そう思うわ」
「俺の指が忘れられなくしてやる」
「虎児、言い方!
「まっ、今日元気な奴は健康だろうな」
そう、そうしてこんな日に決まる事もある。


最初は健康に対する不安を話すような、これから頑張って行きましょうねだった。
「前にいった所、何年も通ったんですけどね」
「この間までいった先生、変なところ触るの」
ところが一人が楓にいった所から、事情が変わる。
「あそこ…ヤバいわ」
この集まりの参加者は健康となっていった。そして、集まりにも名前がついた。
『健康を愛する会』
本日その今期の会長が決定となり、みなの前で挨拶することになった。
「でもいいのかな、僕なんかが会長で、たまたま居合わせただけなんだけども」
「何をおっしゃりますか、新会長、その時その中で一番健康なものが率いるべきなのです」
レポートを書いていたら、肩こりがひどくて、肩を動かしていたら「こういうときは楓にいきなよ、腕もいいし、料金もこのぐらいで、だいたい一回でよくなるぜ」
なんていわれたんだ。
素直に、へぇ~そうなんだと思って、肩も辛くなっていたし、行くことにした、そしたら今日はとんでもなく混んでいた。これは時間がかかるなと、上着を脱ぎながらよそ見していたら。
地獄絵図が始まった。
「ギャァァァァァ」
予備知識がない人間が、健康処 楓の先生がいきなり技をかけ始めたら、これは胃腸にとてもよく効きますといっても、まず信じられないだろう。
「アアアアアアア」
絞り出るような悲鳴である、その悲鳴を聞いたら、恐怖で体が全く動かなくなっていた。
「君は脂っこいもの食べ過ぎだ」
次の相手は膝の裏側をもみもみされている。
そしていつの間にか、立っているのは僕一人になっていた。
ああ、もう…これまでか…
「あっ、初めての方ですね」
「えっ、はい」
「肩がお悪いようで」
先程まで屍の山を築いていた男が、その山の前で、とても丁寧な口調で聞き取りしてくる。
「肩の高さが変わってくると、腰も悪くなっていきますので、ストレッチをお教えしますから、一日に一回やっていただければいいでしょう」
普通の対応である、それ故にさっきまでの事が頭から消えていたそのとき。
「じゃあ、ちょっと肩をやりましょう」
グッ!!!!!
鎖骨のくぼみ、そこに思いっきり指を入れられ、あまりの痛さに崩れ落ちたところに。
「こんにちは」
と岩彰が入ってきたのである。

「虎児くんに彼女ができて、道をはずすしたかと思ったでキュン」
「キュンさんは虎児くんが独立するとを楽しみにしてますからシュ」
『健康を愛する会』の正式名称はもちろん『健康処 楓を愛する会』である。
だいたい一発で悪いところを治された人たちは、今もこうして集まり、いや、月曜日の夜は会議室借りて、遠方からの人たちはオンラインで参加し、会長選挙などを組織的な活動をしていた。
「しかし先生に久しぶりに技をかけられたから、これで明日もがんばれるでゴワス」
「来るぞってわかっていても、避けることができない、あの空に浮く感覚痺れたでシュ」
がこれは己の健康状態の話をする会と言よりさ、何かの巣窟ではないだろうか。
「あ~早く虎児くんの指を忘れられなくなりたいキュン!」
「僕は…やっていけるかな」
新会長は不安そうだが、大丈夫、君も慣れるよ!

この男は本当に癒しを仕事にしている人間なのか~健康処楓~

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  『とにかく早い者勝ちっ!』  
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本日も作品のためにもクリックお願いします。

 

腕を捕まれ、背中を反らされた状態では苦悶の表情を浮かべることだろう、しかも腕はVの角度、これは痛い。地域の掲示板に貼られていたお知らせがふと目についた、視線を少し上にすると、技をかけている方は見知った顔であった。
白衣姿の幸洋(コウヨウ)だったからである。
「こんにちは」
「おう!来たか」
岩彰(いわあき)が健康処 楓の玄関で挨拶すると、同級生虎児が出てきた。
「はい、これ」
どのぐらい運動しているのか、消費したのか管理しているものを渡す。大体目安としては一日500キロカロリー活動で消費することとしている。
「でも心拍数も見るのね」
「それ見ないとどのぐらい負荷がきいているかわからないじゃんか」
そこを知らなかったために岩彰は安静時の脈拍数のまま歩いていた。
「それじゃあ、足りないから」
そういって目安はここなどと、そして実際に動いてみて、どのぐらい疲れが残っていたのか確認しながらというやり方を取っていた。
「そういえばあのポスターってなんなの?」
「おっ、見たのか、あれはご近所プロレスだな」
「えー何それ」
「ガキの時はプロレスの団体が来ていたけども、そこが来なくなってもう何年だから、近所のプロレス好きがやろう!っていいだしたんだよ」
「それでなんで先生が」
「それがな、元々は近所のお医者さんたちと、救護として呼ばれたんだ」
「まさか!」
「わかるがそっちじゃないんだな」
数年前、臨場感がほしいということで、リングアナを頼んだ。
「その人が途中で腰をやったんだよ、大きな声出して、はずしたんだよな、そんな時に颯爽と先生がやってきたんだよ、格好良かったぜ」
幸洋はリングアナを羽交い締めした後に、肩を入れるストレッチ(これはあまり痛くない)そこからの固くなった背中をゴリっと流して。
「ギャァァァァァァ」
会場内に響き渡った。
「この後何事もなくリングアナは実況したんだよ、そのリングアナ推薦ってやつだな、先生はリングに上がらないのかって」
プロレス技に詳しいリングアナが、先生の技は並みの技ではなかったといったことで、実行委員会はその意見を採用し、先生に正式にオファーが届いた。
「じゃあ、ちょっと足の指のマッサージするから、お湯で足を温めている間に俺がおすすめする先生の初試合ダイジェストで見るといいぞ」
この時岩彰は思った。虎児も幸洋先生と同類だからこそ、ここで上手くいっているのだと……
『この男は本当に癒しを仕事にしている人間なのか、地獄からやって来たのではないのか!』
「その言い方!
『腰はあれから一度も悪くなってません、ありがとうヘルニヤ(地獄笑)先生、対しましては最強の胃腸虚弱「ストマック田中」の入場です』
審判が握手をするように促すが、そこで先生はやらかした。
「ギャァァァァァァ」
「今のは手にある胃のツボを押したようですね」
「やはり先生は試合が始まるまで待てなかったようです」
ここで観客たちは盛り上がる。
「花火は上がっていると思ったから、何かやっているとは思ったけども……」
「さすがにプロレスっては思わなかったろ、はい、足拭くぞ、最近はどうだ?」
「まだ慣れないのか、次の日足が辛いときあるわね」
「血行はよくするが、足の指のストレッチもやった方がいいな、指に力いれてみ?、薬指と小指な、あんまり使えてないみたいだからな」
ワァァァァァァ
説明を受けている間にも、試合は進んでいく。
「先生ドロップキックしてたわ」
「ドロップキックはいつでも出来るようにしておけは名言だと思うよ、あ~俺もそのうち出てぇ、ああ、ポスターは見たとは思うが、実は名勝負はあの次の試合なんだわ」
次の試合は、幸洋の師匠黄藤(きふじ)が選手として出場、幸洋の師匠といっても、幸洋は結婚することになってから指示したので年齢は近い。
「コウヨウ先生と同じように背中反らしVを決めたんだ、けどもこの時な!」
『幸洋くん!あの技は君の技は本当に素晴らしい!リスペクト故に私もこの技にしてみた』
しかしそこからだ。
『けども私ならあそこから二ミリ締め上げる!』
「ギャァァァァァァ」
「その時歓声も悲鳴に負けないぐらい飛んだんだぜ!」
「うわぁ、本当に何そのイベント」
「先生が入場するサイドはすぐに売れちまうんだぜ」
生で観戦する場合は、選手から技をかけられることもあります、不健康な方は要項をよくお読みになって、同意の上チケットをお買い求めください。

 

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「これは憎しみではなく愛である~健康処楓~」

「オヤジ、これ届いてる」

「おお、ありがとう」

青葉は、父の幸洋こうようあてに届いた封書を渡した。

ぺらり

「…今日は虎児くんのバイトはないかな」

これから母親の女性客が来るようなので、青葉も家を空けることにした。ちょうどいいので虎児も誘ってどっかの食べに行くことにしようと、連絡をつけたところ。

「君は楓の、先生の息子さんだよね?」

「どうもお世話になってます」

こちらは知らない顔だが、挨拶はする。

「お父さん、元気かな?」

「っていうことがさっきあった、顔を覚えてなかったのはうちに来ていたのは大分前だったようだし」

「でもすごいな、その人は今も先生のことを覚えているんだな」

「いや、あれはただのドM」

言い方!

この作品は幅広い年齢層がご覧になってます。

「え~だってそういうのしかないじゃん、刺激を求めるためにうちに来てるタイプなんで」

「それはMだな」

「そうして、そのいい年した人が、オヤジの話を聞きたがるので、なんか途中でうんざりしてさ、それじゃ電話して直接話したらいいじゃないですかって、そしたら…」

そ、そうかい、これから私はお父さんととっても大事なお話になるから、君はこれで美味しいものでも食べてきなさいよ。

「強引にお金渡されて、まっ、そんなわけでそのお金で、僕らはご飯が美味しいわけ」

「悪いな、俺も奢ってもらって」

二人は今ハンバーグが有名なお店にいるが、常連おすすめカレー定食を頼んだ。

健康処 楓は最初から有名というわけではなかった、有名になるきっかけというのがある。つまり先生も元からああだったわけではない。

とある不健康のせいだ。

そいつには何度も何度も、体に悪いことは控えてください、お酒の量を減らした方がいいですよ、子供さんがまだ小さいし、奥さんも心配していますよ?

などといっても。

「すいませんね、先生、またお願いしますよ」

こんな調子であった。

そして、ついに限界が訪れてた。

「えっ?先生」

ギュウウウウウ

「イデデデデ」

最初のツボは上手いこと押せたのだが、そのあまりの痛さから逃げようと体を動かした。

スッ

この時幸陽の体が自然に動いた。

高校時代柔道の授業で、お前は寝技を覚えろと言われ、地道に技を磨きあげ、大会に助っ人として呼ばれるほどの腕があったが、自分でもなんでここで動いたのかは未だにわからない。

「ギャァァァァァァ」

覚醒はそこで起きた。これは憎しみではなく愛であると、相手の健康のために、自分はただなるよう、効果的なツボをひたすら押していく。

「アアアアアアアア」

血行をよくなってきた、そしてここからの!

「グァァァァァァァ」

発声される悲鳴ではなく、肉体の悲鳴を感じとるのだ!!!!!!!!!

「その時の人は、後日、謝りに来たんだよ」

あの痛み、いっそ殺してくださいとそう思ったが、すぐに自分は今までなんてひどい生き方をしたいんだろう、やり直したい、やり直せるだろうか…

身なりを整え、酒量が減り、家族を大事にするようになったその姿に、何があったと周囲が驚き、そこで噂が広まっていき、楓にはワケありのお客さんが増えていったのだ。

「そういえば先生の書いたファンレターってどうなった?」

「あれはファンレターって言うのかなな」

この間珍しく真剣にテレビを見ながら、何かを書いていた。

「この子のむくみってきにならない?」

さすがにそのまま突撃はしなかったが、自分で出来るむくみとりのマッサージレシピを作成し、それをファンレターとして送ったらしいを

「返事くるといいな」

「あっ来たらしいよ」

「マジで?」

「カレーお待たせしました」

「おっ来た来た」

二人の間ではこの話は終わったが、実は続きがある。

ファンレターは楓への予約という形で返事がやってきた、そして今ごろ楓に訪ねてきている女性客がいるはずだ、ライブの前にむくみをしっかりとりたいっていう悩みを携えて。



自作小説「遠慮~健康処楓」

イワアキはぐったりしている。

「おっ、どうした?」

先日マッサージをしてくれた同級生が話しかけてきた。

「そこの椅子が堅くて」

「あっ、これか」

そういって椅子をさわった。

「これなら長く座っていたら、しんどいかな」

「なんか肩も辛い」

「どのぐらいだよ」

「悪霊が乗っているぐらい痛い」

「悪霊w」

大ウケした。

「どうする?今日は楓に行くつもりだけど、来るか?」

「お願いするわ」

楓とは健康処 楓であり、この同級生虎児こじが修行しているお店である。

美しい変化という楓の花言葉から、店名は来ているというこの店を覆うように、敷地内にある楓の銘木が濃い影を作っていた。

「オオオオオオオオ」

家の奥から悲鳴が聞こえてきてました。

「意外になれるだろう」

「そうね」

「あっ、いらっしゃい」

玄関先でスーツ姿の男性が、先生に捕まり。

「膝がね、悪いよね」

そこで膝の裏にあるツボをぐい

「アアアアア」

「ああ、いらっしゃい、岩彰さん、準備はできるよ、虎児」

「この店は腕はいいから、お客さんは一定数いるんだけども、先生はこんな調子だからな、教わるやつがすぐにやめるんだわ」

「でも虎児くんは、才能あるんじゃない?この間受けたあと、ぐっすり眠れたし」

そこで微笑みを浮かべるものだから。

「虎児、お湯が冷める」

「ああ、わかってるよ」

「さあ、どうぞ」

リクライニングシートを勧められる。

「じゃあ、悪霊を退治しなきゃな」

「悪霊?それはシネマコズミックの隣に、カレー屋さんあるから、そこの今村さんに頼みなよ」

「例えだから、これ」

「あっ、そうなの、今村さんは県で三本の指に入る凄腕だから、悪霊だったら、うちじゃなくて、今度からそっちね」

「情報が多くて、何から突っ込みすればいいのかわからないわよ」

「ここか」

油断した。

虎児が岩彰の頭の真ん中より右ををぐいっと押した。

「あっ、ツンツンくる、ヒャー」

「やっぱり効いたか、左肩がおかしかったもんな」

かばうように反対側がこっていた。

「アレルギーは事前に聞いていたが、椿もオリーブも大丈夫と」

「はい、じゃあ、これ」

息子さんが持ってきたパッケージを見て。

「それものすごく高いやつじゃん」

高品質のために普段使う値段ではないヘアオイルであった。

何しろ100年椿を栽培してきたところの油と、ローマ時代からオリーブを扱っていブランドのものを両方贅沢に使ったものである。

オイルで服が汚れないように、タオルを巻いた。

「頭をマッサージをするときは?」

ピアニッシモで」

「はい、じゃあ始めてください」

こういうところに出る修行している感。

モミモミ

「痛くないですか?」

「気持ちいい、ほぐされている感じがする」

「さっきの椅子がここまできてんだよ、いつもはあの椅子には座らないよな?」

「うん、他がいっぱいだから、あいているところあそこしかなくてさ、普段座っているものじゃここまでにはならないじゃない」

掌で円をかくように、力か入りすぎないように。

「あ~そこそこ」

「いかがですか?お嬢様」

「余は満足じゃ」

「せっかくなんだから、お嬢様っぽく答えてくれよ」

「それもそうね、でもマッサージ師になったら繁盛しそうね」

「そうだろうがな…」

「あら?何か問題が?」

「先生って奥さんもゴットハンドなんだわ」

「それはすごいわね」

「でも女性のお客さんしか取らなくて、俺は奥さんからもマッサージを習っているんだけども」

男性のお客さんからは、なんで男性はダメなんだといわれるような腕の持ち主で、その人が男性の弟子をとり、筋がかなりいいらしい。

「だから予約受け付けになると、ほぼ男性からの客になるって言われている」

野太い声で虎児君をお願いしますになるともう予測されていた。

「あれ?息子さんは?」

「あいつはあいつで他のところから習っているんだよ、商店街にある腰痛のスペシャリストがいてな、そこで勉強してる」

「腰痛で悩む人は多いからね、でもそれはそれとして、女性のお客さんからも虎児くんは人気高いとは思うけどもね」

「なんでだ?」

「痛くないから、男性にやってもらうと、結構痛いのよ」

「お前、俺以外のやつにやらせたことあるのか!」

「虎児言い方!

このお話はみんなが読める内容です。

「ギャァァァァァァ」

「あっ、さっきの人と違う声だ」

「あれは胃腸が悪いね」

「そんなのわかるのか」

「だいたいね」

楓には花言葉がある、美しい変化という意味を最初に浮かべると思うけども、他にもある、それは「遠慮」。

「私は不健康には遠慮はしないよ」

家に配達にきたところ、先生に消化不良の胃腸を見破られ、ゴリゴリ足つぼをかけらた。

この店ほど、遠慮という言葉が似合わない店も、おそらくない。



自作小説 「美しい変化 ~健康処楓~」

すいません」

「どうした?」

「ちょっと具合が」

どうも体の踏ん張りがきかない毎日が続いている。

「おっ、どうしたんだ?」

そんな私に話しかけてきたのは同級生男子である。

「何時ものことよ、ほら、私って体温が夏でも35℃ぐらいだし」

自虐的にいったところ。

「じゃあ、こいつをやろう」

『サービス券 健康処 楓』と書いてあった。

「予約がとれれば、その券一枚で一回サービスだ」

そこまで話しはしない同級生がなんと、気前がいいことだろう。



検索してみた。

・不健康は許さない先生がいます。

・あの衝撃は忘れられません。

・店名の由来になった花言葉通り、美しい変化を迎えることが出来ました、ありがとうございました。

と腕はいいようだった。

「すいません、チケットをいただいたのですが…」

連絡して、日時が決定し、目印の楓の木を目指して歩いていった。

(あっ、これか)

県の銘木表示がある立派な楓。

「よっ!」

そこで話しかけてきたのは、あの同級生である。

「あれ?なんでいるの?」

「あの無料チケットは俺がマッサージ担当するやつだし」

「え~」

「なんだよ、嫌そうだな」

「お客さんが来たのかな?」

そこに家の中から現れたのは白衣の男で。

「先生、お客さんがチェンジですって」

「なるほどね、それじゃあ、空いているから私がやろうか」

「最初に言っておく、先生のはかなり痛い」

「えっ?そうなの?」

どのぐらいなの?と続けようとしたとき、近所の人が回覧板を持ってきた、それを見た先生は、近所の人にかけより、流れるように体を拘束し、肝臓のツボを押した。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」

あまりの激痛に悲鳴が響いた。

「このぐらい痛い」

「私、帰る」

「今帰らない方がいいですよ」

「どちら様?」

「先生の息子さん、俺らと同じ年」

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「先生はな、視界に不健康が入ると、許せないそうなんだ」

「そうなんだ、今は弟子に教えるからってことで、岩彰イワアキさんの不健康を見ても抑えられるけど、チェンジとなれば、どうなるか私でもわからないな」

「あっ、親父の目が光った」

「だな、諦めてマッサージしていったほうがいいぞ」

「無事に帰れるかしら」

「弟子に女性経験踏ませてやりたい気持ちが勝ってるうちに、早く中にいってくれ」

「親父、言い方!

ここは良い子も見ちゃってるからね!

「それじゃ、岩彰さん、中へどうぞ、部屋の準備はできますので」

そして奥に通されてから。

「フットマッサージが終わる頃には、親父は次の予約入っているから、その隙に帰ってくれると」

「わかりました」

「じゃあ、マッサージよろしくね」

「任しておけ」

お湯にラベンダーオイルと、塩を入れて混ぜる。

「いい香りね」

「ここのマッサージは滅茶苦茶いいものを使っているから、何でもおすすめできるぞ」

「へぇ~」

「受け売りだけどもな、元々うちの母ちゃんがこの店の常連でな、それが縁で職業体験して、んでこんな世の中だから、手に技術つけろってわけでお世話になってるのさ」

「それであのチケット配っているわけ?」

「誰にでもってわけじゃないぞ、んでもってちゃんと技術は身に付けているから、人をマッサージするまで、ずっと蕎麦を打って練習してたんだ」

「何で蕎麦?」

「蕎麦には全てがつまっていると、粉を混ぜてとか、生地を伸ばしたりってな、アレルギーとかなかったら、今度そば打ってやるよ、うちの家族はそろそろ蕎麦に飽きてきたんでな」

「じゃあ、いただくわ」

ぎゅー

「そこ効くわね」

「自虐的っていうわりには、色々頑張ってるな」

「あら、わかるな」

「足の筋肉でな、ちゃんと歩いているな、偉いぞ」

「ありがと、でもなかなか良くなくてね」

「血行はよくないな」

「冷たい?」

「何としてもよくしてやりたいな」

「朗報って言えばいいのかな」

息子さんがタオルを交換に来た。

「どうしたんだ?」

「月二回ぐらいだったら、マッサージのために家に来てくれるといいなって、親父がいってる」

「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」

表示はしてませんが、さっきから時々悲鳴が聞こえてきてました。

「二日酔いでうちに来るからだよ」

「近所でも有名だもんな」

「それは怒られないんですか?」

「近年増えている医療費の削減に繋がっているから、野放しになってる」

いいか、不健康な奴は、あの楓の木がみえる辺り、あそこを歩くときは気を付けろ、健康にされるぞ!。

その店の店主は近所からは妖怪扱いされていた。