魔法が消えるのが恐ろしくなる。

「そうね、とりあえず朝起きたら、自分の肌に驚くといいわ」
健康処楓の常連は、楓に行くか迷っているお客さんがいると、健康を愛する会の楓お試しクーポンを申請してくれるぐらい、親切である。
このクーポンは金印会員が、会の貢献度によって発券されるものであり、かなりレアなものであった。
渡された女性は、ホテルに一日宿泊+このクーポン使ってマッサージされるなら、悪くないかなと気軽に思っている。
「初めまして」
そう自分の体に何かが起こるその直前までは…
こめかみのツボを押され、むくみを取るために顔の揉み流される。
「アッアッアッ」
そして腸内がよく動くように内臓に効く指圧、ひねりなどを加えられて解放されると、生きてて良かったなどと思うのだが。
バタン
トイレに行くと、今までの倍は軽く出ていたので、私はどこか悪いのだろうか、どこか体が傷ついているから、こんなことになるのだろうか?と不安になり、そのまま早めに寝る。
そして朝起きた時、何気なく自分の顔に指が触れると、なんだこれは、滑りが全然、もちもちっとしているけども、何か寝る前にパックでもしたっけかな?などと思うと、昨日は菊露からマッサージを受けたことを思いだし、この肌艶がその効果なのかと驚くのである。
しばらく続くが、ある日ある時それがフッ!と解けた時。
自分にかかっている魔法が消えたことが恐ろしくなるのであった。
「そこからはもう菊露様って呼ぶようになるから」
今までだって美肌のために、高い化粧品を使っていた。
しかし、それでは得られないほどの充実したもの、美肌が手には入るのは菊露のマッサージだけ…


「師匠のお客さんって、ご新規さんと常連さん半分半分なんですよね」
「そりゃあ、うちと違って治るを求めてないからだよ」
「何を求めているんですか?」
「美しさ、それで得られる満足感ってやつかな、前に言われたことあるけども、自分でもこういう状態になれるのか、希望が出てきましたっていって、諦めていたことに挑戦してみます!って言ってたお客さんいたからな」
人生をより良く変えたい方、健康処楓のエステでお待ちしております。
「ただ予約は本当に取れないからな」
「女性のお客さんだけでこれだから、虎児君が働くようになったら、もっと大変になるんじゃないかな」
健康を愛する会では虎児くんのデビューは速報、号外として扱うつもりなので、その日を楽しみにしております。